販路拡大を支えた「言葉」と「デザイン」の力

有限会社 玉喜

有限会社 玉喜は、デザイナーの松本さんとの協業を通じて、「見せ方」だけではなく自社のビジョンを言語化する重要性を学びました。初めての挑戦から、小売売上20倍を実現するまでの歩みをご紹介します。

Profile

1966年に創業以来、海苔としいたけの産地問屋として歩みを重ねてきた有限会社 玉喜。地域に根ざした確かな目利きで素材を選び、長年の信頼に支えられながら事業を展開している。

有限会社 玉喜

代表取締役社長 寺田 和弘

佐賀県佐賀市北川副町光法1777-10

Interview

事業課題を解決するために

私たちは佐賀海苔としいたけの産地問屋として、地域に根ざして商売を続けてきました。主に企業向けのBtoB取引の卸売業を基本とし、個人消費者、飲食店向けの小売は年間売上200万円程度と小規模。コロナ禍以前は「まだ伸ばせる段階」という認識に留まっていました。
課題は“見せ方”でした。品質には自信があるものの、パッケージや販促物は必要最低限で、売り場でどう見せるか、消費者にどう伝えるか、さらにはどんな発展をめざすのかビジョンは曖昧なまま。商品そのものの良さだけで勝負してきた分、「選ばれる理由」をどう作るかが不明確だったのです。
普段は資材メーカーにデザインを依頼していましたが、小売販売を本格的に強化するには、新しい視点が必要だと感じていました。そんな中、知人の紹介で出会ったのがデザイナーの松本さんです。本格的なデザイン発注は初めてで、価格の相場も相談方法も分からない状態でしたが、会社のビジョンを明確にし、見せ方を整える大きな転機となりました。

最初の失敗で得た学び

最初の依頼は「おしゃれなデザインをお願いします」という非常に曖昧なものでした。誰に届けたいのか、どこで売りたいのかといった前提情報を十分に共有できておらず、仕上がったデザインを見たとき「これでは売れない」と強く感じました。デザインそのものが悪いのではなく、私たちが目指す方向性と一致していなかったからです。
この失敗を通して、「ビジョンが曖昧では思った形に仕上がらない」という当たり前のことに気づきました。また、シンプルな商品だからこそ、単なるパッケージの刷新にとどまらず、事業全体に自分が誇りを持ち、情熱が湧くような形へと変えていく必要があるとも強く感じました。それ以降は、ターゲットやどんなシーンに合う商品なのかを整理し、言語化。徹底してビジョンを固めていきました。
さらに、手描きのラフ案を用意するなど情報共有を具体化。松本さんとのコミュニケーションが密になり、同じ方向を向いて制作できる体制ができました。依頼する側の姿勢が変わることで、デザインの力をより引き出せると実感した時期でもありました。

一貫した“見せ方”が生んだ事業全体の変化

松本さんとの協業では、佐賀海苔「一流浜」のブランディングをはじめ、パッケージ、営業用パンフレット、チラシ、看板、店舗レイアウトまで幅広く取り組みました。私だけでは思いつかない手法も多く、社外視点として大きな助けになりました。こうして販促物から店舗外観まで一貫した方針でデザインが整ったことで会社の印象は統一され、広報・提案・販売のすべてで説得力が増しました。受け手への伝わり方も確実に良い方向に変わったと感じています。
営業活動にも変化がありました。パッケージやパンフレットがきっかけとなり、商談に持ち込める企画の質が向上。コンセプトが明確になったことで、一層自信を持って提案できるようになり、販路拡大へと結びつきました。さらに、デザインを軸にしたブランドストーリーを語れるようになったことで、取引先との信頼関係も深まりました。
その結果、WEB通販・工場直売所・地元佐賀や関東の飲食店への販売数が増加し、小売売り上げは約4,000万円と、コロナ禍以前の約20倍と大きく成長。加えて、ショッピングモールでのポップアップイベントなど、事業展開の幅も広がっています。こうした成果は、商品の価値を相手へ“伝わる形”に整えたことによって実現したものだと考えています。

さらなる挑戦にもデザインの力を

10年にわたる協業を通じ、丸投げではなくデザイナーと目的や背景を共有しながら進める体制が定着しました。「何を目的としているのか」「どこを重視したいのか」という方向性が共有できているため、修正は最小限で済み、安心して意見を交わせる関係が築かれたことで、より良いものづくりに取り組めています。
今後は海外展開も視野に入れています。私たちは大手と同じ戦い方はできません。自社の規模に合ったターゲットに向け、時には大胆なアイデアで戦略を練る必要があります。商品の価値や魅力を“正しく翻訳して伝える”ために、デザインは欠かせない要素だと考えています。
デザインに課題を感じている事業者の方は、まず県の支援機関に相談してみることをおすすめします。支援制度や補助金を活用すれば、初期の負担を軽減できます。
今回の協業を通じて強く感じたのは、「言葉にして伝えること」の大切さです。自社の思いや考えを整理し、外部に発信することで、商品の価値をより多くの人に届ける機会が広がります。
こうした一歩が、販路拡大やブランド力向上につながるはずです。ぜひ、前向きに取り組んでみてください。

Designer依頼したデザイナー

PINEBOOKS DESIGN 松本 健児さん

ディレクター、デザイナー

佐賀県佐賀市を拠点に置き、佐賀県、福岡県、長崎県を中心に活動。ロゴ、印刷物、パッケージ、看板、ホームページ、Tシャツなどの各種デザインはもちろん、商品企画やブランディングなども手厚くサポート。依頼者に寄り添い、唯一無二のデザインを幅広く提案している。